六月の袴腰峠に残る雪
どんな伝承か
北国の春の遅さを語るくだりで、著者は越中で見た光景を書きとめている。袴腰峠でも黒部山の原始林の中でも、六月はじめの雨の日だというのに、溶けきらない残雪がまだ道のわきに高く積もっていた。雪国では春の訪れが里でも遅く、旧暦三月の雛の節句に田の泥が顔を出しただけでも、さらに奥の在所の村人がやって来てうらやんだほどだったという。
原典より
越中の袴腰峠、黒部山の原始林の中では、共に六月初めの雨の日に、まだ融けきらぬ殘雪が を被って、路の傍に堆かく積んで居た。—— 定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第2巻』は、柳田国男の紀行と旅の随筆を収めた著作集の一巻である。昭和三年一月の自序に続く「雪国の春」や菅江真澄の日記を読み解く文をはじめ、東北の村々の正月、火と炭、浜の暮らしの見聞、「秋風帖」「東国古道記」、昭和十五年十一月の自序を持つ「豆の葉と太陽」などの紀行を並べる。峠や古道、佐渡・五箇山・熊野などの土地を、住む人の暮らしと信仰から見ようとする文が多い。