追波川を運ばれる腸チフスの子
どんな伝承か
中一日置いた次の日、十五浜からの帰りに追波川をさかのぼる発動機船の上にいた。大雨の小止みに釜谷の部落を見ようと甲板に立つと、曳船を頼むといって濡れた舟が一つ岸に繋いであり、そこへ一群の人が下りてきた。石巻の医者へ連れて行く腸チフスの病人と聞き、事務員が面倒な条件ばかり出すのを、一々首で承知して釣台をかついで乗ろうとする。年老いた女が二人付いてくる。荷が軽く子供らしいので覗くまいとしたが、はずみで眼を見合わせた。十一、二ばかりの女の子で、川船の旅の後に石巻で亡くなっただろうと思う。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第2巻』を全331話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。