船底で西瓜をかじる鼠
どんな伝承か
三陸沿海を行く汽船の船底での出来事。船員がやって来てハッチの蓋を揚げ、不意に明るい日影がさっと差し込むと、御伽話で聴くような声でチュウと鳴き、船底を駆け歩くものがある。畜生め、西瓜をこんなにかじっていやがる、おや蓮の実も食ったなどと、いかにも興味ある発見をしたような声を出す。事務長に尋ねると、この鼠という奴は悪戯なやつで、別に腹が減ったから食うのではなく、メリケン粉などは百袋とも一晩に穴をあけますという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第2巻』は、柳田国男の紀行と旅の随筆を収めた著作集の一巻である。昭和三年一月の自序に続く「雪国の春」や菅江真澄の日記を読み解く文をはじめ、東北の村々の正月、火と炭、浜の暮らしの見聞、「秋風帖」「東国古道記」、昭和十五年十一月の自序を持つ「豆の葉と太陽」などの紀行を並べる。峠や古道、佐渡・五箇山・熊野などの土地を、住む人の暮らしと信仰から見ようとする文が多い。