京都で杓子が折れると出産の前兆
どんな伝承か
杓子には人の魂を摂取する力があると考えられ、さまざまの俗信が結びついた。待人を呼ぶのに三度招き、四方に向けて客を招く。この物で招かれると三年のうちに死ぬという話もある。周防のあたりでは、赤子に産声をあげさせる手段として杓子で扇ぐ風習があったという。こうしたことから推して、京都などで杓子の折れ、または毀れるのを、近親に子の産れる前兆と見たのも、一種の魂の解放と考えることができると著者は説く。これは「おたま杓子」の呼称に拘泥した結果ではなく、杓子の本来の形にまで考え及ぶとき、いよいよその推定が事実らしくなるという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。