知多沖のあやかしと柄杓
どんな伝承か
尾張知多郡の海上では、あやかしを鎮めるには柄杓をたくさん海へ投げ込めばよいという話が秉穂録に見える。十二月の晦日に舟を浮かべると特にこの災いに遭いやすいという。柳田は、瀬戸内海の船幽霊が杓をくれと叫び、渡すと水を汲み込んで船を沈めるので底抜けの柄杓を用意しておくという有名な話を挙げたうえで、知多の例には杓の底を抜くという記述が見えない点に注意し、亡霊が詭計に乗るという説明は風習より後に作られたものだとする。盆暮れは聖霊を送る日であり、そこで柄杓を供えるのは本来それが魂の宿りだったからだろうと推している。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。