信州姥捨山の姥石
どんな伝承か
信州の姥捨山は古今集の歌に始まり、大和物語などに女房にそそのかされて伯母を捨てた話が事実のように語られているが、土地の伝えは必ずしもその通りではなかったらしい。停車場よりさらに下の田毎の月の田の畔に、高さ六、七間のやや角張った一つ石が姥石として立っている。峯から見ればほんの麓で、ここで置き去りにしたのでは話にならないが、京の人々は捨てられた老女がこの石になったといい、あるいは小山を隔てて捨てさせた嫁の母も石になったとか、伯母の怨念で石に化したとも古くから伝えた。柳田は化石の話が災いして本来の姥石伝説が消えかけていると惜しむ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。