箱根の宿で膳に出た山の神という魚
どんな伝承か
石黒忠篤の談として柳田国男が記録した一件である。四年前、石黒が相模の箱根町に逗留していたとき、宿の女房が恐ろしい顔をして皿一杯の魚を膳に添えた。名を問うと山の神といい、伊豆の海岸で捕れるものだという。石黒は、山の神が山の神を食わせたと戯れたという。この魚は逗子の海岸にもあった。オコゼを山の神と呼び山神の祭に供える諸国の風習を集めた記事の中に、新見聞の一つとして掲げられている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。