山から戻ってきた小学教員
どんな伝承か
陸中二戸郡の深山で猟人が猟に入って野宿をしていると、不意に奥から出てきた人があった。よく見ると数年前に行方不明になっていた村の小学教員であった。ふとしたことから山へ入りたくなって家を飛び出し、まるきり平地の人と違った生活をして、ほとんど仙人になりかけていたのだが、ある時この辺でマタギの者が棄てた弁当を見つけて食ったところ、急に穀物の味が恋しくなり、次第に山の中に住むことが嫌になって、人が懐かしくとうとう出てきたと語ったという。里に戻ってからどうなったか、その後の様子は今では誰にも問うことができない。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。