淋しい池へ戻る茸狩り
どんな伝承か
柳田国男自身の幼い頃の経験である。彼の村は県道に沿った町筋で、近くにあるのはほんの丘陵であったが、西に川筋が通って奥在所は深く、狗賓の話の多い土地であった。七つの歳に頬冠りの男に抱えられて走られた事件から三四年の後、母と弟二人と茸狩に行ったことがある。遠くから常に見ている小山であったが、山の向こうの谷に暗い淋しい池があり、しばらくその岸へ下りて休んだ。夕日になってから再び茸をさがしながら、同じ山を越えて元登った方の山の口へ来たと思ったら、どう歩いたものか、また同じ淋しい池の岸へ戻って来てしまったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。