仙界真語・沢井才一郎の入山
どんな伝承か
『仙界真語』一巻は、尾州の藩医柳田泰治の門人だった沢井才一郎という十七歳の青年が、遠州の秋葉山に入って神になったという一条を記す。著者はこれを名古屋の秋葉大権現の神異と呼び、幸安の事件よりさらに十五年ほど後で、関わった人々が学問に深入りしなかったため古風な民間信仰の清らかさを留めていると評する。青年は口で奇瑞を説く代わりに、説明のつかない不思議が次々と現れ、見た者は誰も疑えなかった。多くの信徒が興奮と感激に包まれるなか、本人は魂だけを大神に召され、若い骸を残して去ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。