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網張温泉の笹原に立つ女房

所在地岩手県岩手郡雫石町長山(網張温泉)
年代明治期(三十年ほど前)
登場醤油行商の男とその女房
出典定本柳田国男集 第4巻

どんな伝承か

三十年ほど前、盛岡の町で醤油の行商をしていた男の女房が、日の暮れかかる頃に表の戸を開けて一人外に立っていたところ、その晩から行方が知れなくなった。近所の人たちは悪い時刻に出ているなと思ったという。亭主は気違いのようになって商売も打ち捨て、方々を捜し歩き、岩手山の中腹の網張温泉へ出かけてその辺を尋ねているうち、たった一度だけ姿を見せた。宿から僅か一二町隔たった山の根笹の中に、腰から上を出して立っていた。すぐ飛び出して捕えようとしたが、見えていながら次第に遠くなり、笹原づたいに峯の方へ影を消してしまったという。

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※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません

出典の文献について

定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)

『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。

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