高田の大工又兵衛と行逢った大人
どんな伝承か
東部日本の諸県でオオヒトといったのは山人のことであった。その異説の一つとして北越雑記巻十九に次の話がある。高田の大工又兵衛という者が西山本に雇われていたが、ある夜急用があって一人で山道を帰ったところ、険しい路の引き回った処で図らずも大人に行き逢った。その形は裸身で、身の丈は八尺ばかり、髪は肩に垂れ、眼の光は星のようで、手に兎を一つ提げて静かに歩んで来る。大工が驚いて立ち止まると、その大人もまた驚いた様子で立ち止まったが、ついに物も言わず、路を横切って山に登り走り去ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。