日照りの小笠山に響く天狗囃し
どんな伝承か
狸囃しが都市で聞かれた怪音だったのに対し、山で聞こえる囃しは多くが天狗囃しと呼ばれた。静岡県掛川市の小笠山系にある小笠神社には天狗が棲んでいるといわれ、夏の日照りのころになると、この山から「ピイツクドンドン」という囃しの音が盛んに聞こえてくるという。今なら、地形や気流のぐあいで遠くの祭囃しがすぐ近くのように聞こえるのだと説明されるのかもしれないが、かつての人びとはこれを天狗たちの奏でる囃しと考えて納得しようとしたのである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
異界巡礼(小松和彦)
『異界巡礼』は、小松和彦が著した民俗学の論集である。狐が人に化ける方法と如意宝珠、蓮如絵伝の異人、鬼退治譚と怨霊、家の盛衰をめぐる民話、夢信仰、巫女と陰陽道、洞窟や龍宮の他界観、人を神に祀る信仰、神隠しなどを、昔話・説話・絵巻・お伽草子と高知県物部村などでの調査をもとに論じる。論考と随想を部に分けて並べ、「民俗のランドスケープ」の部には妖怪、凧上げ、祓い、霜月祭り、呪い人形をめぐる小文を収める。