仁照阿闍梨を誘惑した天狗憑きの女
どんな伝承か
京都東山の仏眼寺で修行していた仁照阿闍梨のもとに、七条の金箔打ちの家の者という美しい年増女が下女を連れ、土産を携えて訪れ、そばに仕えさせてほしいと願った。阿闍梨は断ったが、女はその後も白米や餅、菓子、もぎたての瓜や桃などを携えて、たびたび通ってきた。寺僧が出払った日、女は阿闍梨にすがりついて想いを遂げようと迫った。阿闍梨は仏の許しを得てからと持仏堂へ導き、不動尊に助けを念じる。すると女は投げ飛ばされて狂い舞い、自分は東山の大白河に住む天狗で、修行を堕落させようとこの女に憑いたと白状して許しを乞うた。天狗が去ると女は我に返り、二度と現れなかったという。
原典より
と――――数分たたずして女は突然、何者かに投げ出されたように二間ばかり向うへ飛ばされ、ばったりと打伏した。—— 日本の妖怪伝説(小笠好恵・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪伝説(小笠好恵・1966年(昭和41年))
『日本の妖怪伝説』は、小笠好恵が各地に伝わる奇談・怪談を読み物にまとめた伝説集で、序は昭和四十一年五月付である。浅茅が原の一つ家、四谷怪談、九尾の狐、安達が原の黒塚、道成寺、鍋島の化け猫など、岩手から熊本までの四十五話を、伝えられた形をなるべく崩さずに書き直し、おおむね東から西へ並べる。雨月物語や小泉八雲など書物に拠る話のほか近年の体験談も混じり、一部の話の末にはゆかりの寺社へ行く「順路」を付ける。