小笠山成徳院に響く天狗の笛
どんな伝承か
遠州掛川の宿から一里半ほど南の小笠山の別当成徳院で通夜をすると、どこからともなく笛の音が聞こえ、音をたどっても吹き手の姿はない。土地では、寛永のころ天狗になった小笠尾太夫の笛だと言い伝える。尾太夫は浅羽芝村生まれの笛の名人で、秋葉踊りのたびに小笠山の神前で笛を奉じていた。ある年、山頂に祀られる天狗三広坊が尾太夫にだけ姿を見せ、その笛を褒めて眷族になれと誘った。尾太夫は身内に別れを告げてひとり山に入り、十七日の行を終えて天狗となり、多聞天狗と呼ばれるようになったという。
原典より
遠州掛川の宿から一里半ほど南にある小笠山の別当、成徳院の拝殿で通夜をすると、どこからともなく妙な笛の音が聞こえてくる。—— 日本の妖怪伝説(小笠好恵・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪伝説(小笠好恵・1966年(昭和41年))
『日本の妖怪伝説』は、小笠好恵が各地に伝わる奇談・怪談を読み物にまとめた伝説集で、序は昭和四十一年五月付である。浅茅が原の一つ家、四谷怪談、九尾の狐、安達が原の黒塚、道成寺、鍋島の化け猫など、岩手から熊本までの四十五話を、伝えられた形をなるべく崩さずに書き直し、おおむね東から西へ並べる。雨月物語や小泉八雲など書物に拠る話のほか近年の体験談も混じり、一部の話の末にはゆかりの寺社へ行く「順路」を付ける。