十六工場裏の桟橋で河童に引かれた人
どんな伝承か
旧江戸川沿いにあった十六工場の裏に桟橋があった。夕方そこで洗濯物をすすいでいた人が河童に引かれ、今も遺体は上がっていないという。この川は朝は水が少なく、夕方には潮が入って冷たくなり、底が急にすり鉢のように深くなる。うっかり川にのめり込んで心臓麻痺を起こしたのを、河童に引かれたと言ったのだろうと語り手は考えている。注によれば十六工場は今はコーラ工場になり、川で茶碗を洗い洗濯し泳ぐ光景は戦後も見られた。行徳は江戸川の下流で潮の満ち引きがはっきり分かる土地である。
原典より
十六工場のうしろに桟橋があったんですよ。—— 市川の伝承民話 第2集(市川民話の会・市川の伝承民話・1981年(昭和56年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
市川の伝承民話 第2集(市川民話の会・市川の伝承民話・1981年(昭和56年))
『市川の伝承民話 第2集』は、市川民話の会が昭和五十六年に発行した民話資料集である。千葉県市川市の曽谷・宮久保・下貝塚と行徳の古老から聞き取った、狐や狢に化かされた話、火の玉、伝説、昔話、唄、暮らしの禁忌や苦労話を、方言を残した語り口のまま記録している。世間話・伝説・昔話・唄・生活譚の五部を地区別に並べて各話の末に話者と記録者を記し、巻末に語り手の紹介、話者と採訪者の名簿、採訪記、あとがきを付す。