⑤ 虫送り(お送りど) 1
どんな伝承か
下貝塚の虫送りは七月二十三日に行われた。年寄りが寺で拝んだお札を五十本ほどの女笹に挿し、子供たちが太鼓を叩きながら「おーくりど、稲の虫おーくりど」と唱えて田を巡る。かつぐのは尋常六年から高等二年くらいの大きい子で、お札を竹の先に付けて所々に立てていく。最後は耕地の間を流れる幅二間ほどの川で男も女も泳いで身を清めた。この川は梨や野菜、米、肥料を運ぶ舟が通う水路で、子供はみな泳げた。虫送りは戦争の直前まで続いたが、その後は行われず、川もどぶ水になってしまったという。
原典より
虫送りは、まあ、今の七月の七夕みたいなもんで、篠竹持っていってね、紙下げてね、「おーくりど」と書いたり、「虫送り」と書いて、私ら順ぐりやって行くんですよね。—— 市川の伝承民話 第2集(市川民話の会・市川の伝承民話・1981年(昭和56年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
市川の伝承民話 第2集(市川民話の会・市川の伝承民話・1981年(昭和56年))
『市川の伝承民話 第2集』は、市川民話の会が昭和五十六年に発行した民話資料集である。千葉県市川市の曽谷・宮久保・下貝塚と行徳の古老から聞き取った、狐や狢に化かされた話、火の玉、伝説、昔話、唄、暮らしの禁忌や苦労話を、方言を残した語り口のまま記録している。世間話・伝説・昔話・唄・生活譚の五部を地区別に並べて各話の末に話者と記録者を記し、巻末に語り手の紹介、話者と採訪者の名簿、採訪記、あとがきを付す。