那賀郡の山伏家に伝わる犬神落しの呪言
どんな伝承か
県南のある旧家は、江戸時代には山伏をつとめた家で、そのころの犬神落しの呪文が伝わっている。何年生まれの女に憑いた犬の霊を落としたまえと念じたのち、三界の関の清水で清めれば口のない犬は何を食べるのだろうか、という歌を詠み、あびらけんそはかと三度唱えて一喝すると、錫杖の響きとともに犬神が落ち、病人は正気に返るという。犬神使いの取り締まりを逃れた者の子孫が土着して山伏となり、加持祈祷で暮らしを立てたことをうかがわせる家だとされる。
原典より
それによると「何の年の女についた犬の霊を落し給えと念じた上『三界の関の清水で清むれば、口なき犬の何を食ふらむ』と詠じ、『あびらけんそはか』を三唱して一喝すれば錫杖の響きと共に犬神は落ちて正気に返る」という。—— 徳島の研究 第6巻 (方言・民俗篇)(徳島の研究) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
徳島の研究 第6巻 (方言・民俗篇)(徳島の研究)
『徳島の研究 第6巻 (方言・民俗篇)』は、徳島をめぐる研究叢書『徳島の研究』の方言・民俗篇の巻で、阿波の犬神を論じた一篇を収める。狸やトウビョウと並ぶ阿波の憑きものとしての犬神について、起源の伝説、正体とされる小犬や鼠、犬神筋の分布と女系の継承、憑依の動機と症状、祈祷による犬神落しを、筆者の聞き書きと室町期の下知状、郡誌や『阿波民俗』などから述べる。七節に分け、昭和期の犬神をめぐる事件と迷信打破の道で結び、末尾に参考文献の註を掲げる。