日蓮が傷を洗った市が坂の湧水
どんな伝承か
鴨川市(旧安房郡天津小湊町)に伝わる井戸の話。安房と夷隅の郡境にある市が坂の中腹に湧水がある。文永元年、日蓮が小松原で東条景信に襲われて傷を負ったとき、この水で傷を洗ったと伝えられる。日蓮は吉祥翁に導かれて近くの岩穴に入り、三十六日間傷を養生したといい、その洞穴の砂は血止めの砂と呼ばれる。のちにこの地に岩高山日蓮寺が建てられた。日蓮の疵洗い井戸は同町浜荻や鴨川市花房にもあり、花房の井戸のそばには日蓮が挿した桜の杖が根づいたという老木があって、その皮と井戸水は腫れ物に効くとされ、法難の日の九月十二日にはゴマのぼた餅を供える。
原典より
安房郡と夷隅郡の境界に位置する市が坂の中腹にある。—— 房総の伝説(平野馨) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
房総の伝説(平野馨)
『房総の伝説』は、平野馨が安房・上総・下総の旧三国、ほぼ今の千葉県に伝わる伝説を選んで編んだ資料集である。ホトトギスやワラビの由来、片葉の芦や頼朝の箸の杉、弘法の井戸、将門や八幡太郎の話、坂戸神社の人身御供、証誠寺の狸など、動植物・石・池・地名・家・祭りにまつわる伝説を市町村名を添えて記す。はしがきに示す自然伝説・歴史伝説・信仰伝説の三部に分け、解説や論評を加えずに書き連ね、似た話のある土地も併せて挙げる。