ト童の断食祈願と佐久治穴の龍
どんな伝承か
北総には龍の伝承地が多い。印旛沼には昔から佐久治穴と呼ぶ淵があり、かつてここに一匹の龍が住んでいたという。ある年の夏、印旛沼一帯が大変な日照りに見舞われ、稲は枯れはじめ、井戸や池はもちろん利根川や沼の水までなくなった。この時、こじき坊主といわれたト童が、『佐久治穴の龍は友だちだから』と不安のどん底にいた農民を慰め、十七日間飲食を断って龍神に祈り、『七日に及んで雨が降らねば身を投じて龍神の住みかを荒らす』と誓った。すると七日目に大雨が降り、大願が成就したと伝わる。
原典より
印旛沼にむかしから佐久治穴とよぶ淵がある。—— 房総の年輪 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
房総の年輪
『房総の年輪』は、房総各地の伝説・昔話・信仰の伝承地を一項ずつ取り上げた短い文章を集めたもので、著者と刊行の事情は原典に記されていない。香取の要石や真間の手古奈堂、松虫姫、源頼朝や義経の伝説地、沈鐘伝説、椀貸伝説、河童や天狗、海の怪異「もうれん」などを、『譚海』『上総国誌稿』や市町村の民話集を引きながら所在地とともに記す。各項は読み切りの小文で、昭和四十五年と四十七年の年頭に書かれた項を含む。