本を返さぬ者を責める姫の墓
どんな伝承か
全勝寺の墓地に本姫の墓と呼ばれるものがあった。この墓に耳を当てると、姫君が書物を読み上げているように聞こえるというので評判になったという。墓の前には小さな堂が建ち、三方の壁が本棚になっていて、仏書や経書がぎっしり並んでいた。住職に頼めば貸してくれたが、読み終えたら何の本でもよいから一冊添えて返すのが決まりだった。もし借りた本を返さずにいると、返すまで毎晩のように姫が催促に現れるといわれていた。墓は昭和のはじめごろ茨城県の笠間へ移され、今は経蔵の台石だけが残っている。
原典より
時代 江戸時代(年代不詳)全勝寺墓地には、「本姫の墓」というのがあった。—— 新宿と伝説(新宿区教育委員会・1969年(昭和44年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
新宿と伝説(新宿区教育委員会・1969年(昭和44年))
『新宿と伝説』は、新宿区教育委員会が昭和四十四年に編んだ区内の伝説集である。カッパが出る坂、四谷怪談のお岩、矢来町の化け石、女幽霊が掘った清水など、牛込・四谷・戸塚大久保・新宿・淀橋柏木落合の各地に伝わる六十二の伝説を、江戸の地誌や随筆などから採って収める。第一章で伝説の分布と型を概説し、第二章では地域別に、各話へ場所・時代・出典・解説・参考書を添える。