人柱おなと食いかけの柿の実
どんな伝承か
土睦村上之郷の不動堂の下に、お長堰と呼ばれる堰がある。往古、この堰の堤は年々切れ、続く普請の物入りで村はすこぶる難渋した。ある者が堤の守護に人柱を立ててはどうかと言い出し、それがよかろうと決まったものの、誰を立てるかとなると誰も意見を言わない。その日の当番が、すぐ傍の堤で悠々と柿を食っているおなという乞食を指し、あのおな乞食ではどうだろうねと言うと衆議は一決し、大勢でおな乞食を捕らえて人柱として生き埋めにしてしまった。それからこちら堰は決して崩れなくなったが、埋めたあたりに柿の芽が生え、実を結ぶとどの年も片側は皮がなく肉が剥き出しのままであったという。
原典より
村の不動堂(一説、大山の不動明王と、同木同作だと言い伝へてゐるけれども、大山不動尊は金像であるから、全く異ふ。—— 日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年))
『日本伝説叢書 上総の巻』は、藤沢衛彦が大正六年に編んだ上総国の伝説集である。夷隅・長生・山武・市原・君津の五郡にわたり、地名の由来、社寺の縁起、城と武将の事跡、大蛇や狐つきの怪異、俚謡や民間の風俗を、口碑や『総国誌』などの地誌から集める。巻頭に著者の序と緒言を置き、上総国と郡の名義を説いたのち、郡ごとに町村の所在を添えた見出しで一話ずつ並べる。