追われた嫁と笹売りの夫の荒神様
どんな伝承か
昔々、ある処に本家と分家があり、どちらも富裕であった。ある日、分家の主人が驟雨に遭ってどうろく神の祠で雨宿りをしていると、乞食と祠のどうろく神が、今日この本家に生まれるのは男の子、分家は女の子で、二人を夫婦にすれば、と相談するのを聞いた。帰宅すると果たして自分の家には女子が、本家には男子が生まれていた。やがて二人は娶せられたが、姑は嫁を嫌って追い出す。嫁は山中の一軒屋に拾われて財宝に囲まれ、本家の男は賭博で身代を潰して笹売りに落ちぶれ、その家を訪ねて相手が元の妻と知り、驚きのあまり悶絶して死んだ。女は遺骸を側に埋め、墓に牡丹餅を供えて荒神様として祀ったので、荒神餅を粗末にするなと言い伝える。
原典より
昔々、ある処に、本家と分家とがあった。—— 日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年))
『日本伝説叢書 上総の巻』は、藤沢衛彦が大正六年に編んだ上総国の伝説集である。夷隅・長生・山武・市原・君津の五郡にわたり、地名の由来、社寺の縁起、城と武将の事跡、大蛇や狐つきの怪異、俚謡や民間の風俗を、口碑や『総国誌』などの地誌から集める。巻頭に著者の序と緒言を置き、上総国と郡の名義を説いたのち、郡ごとに町村の所在を添えた見出しで一話ずつ並べる。