僧を追い返した老婆の芋が石になる
どんな伝承か
一人の僧が下総の地を巡り、井戸野というところを過ぎたときのことである。五六十ばかりの老婆が芋をひねっているのを見て、僧はその芋を乞うた。ところが老婆は、僧の姿が乞食にひとしく見えたので声を荒らげ、これは石芋なのだから食べることはできない、と言い捨てて家に入ってしまった。僧は黙って行き過ぎたが、しばらくして老婆がその芋を煮て食べようとすると、石のように硬くて、とても食べられたものではなかった。せんかたなく捨てたところ、やがて芽を出したが、その芋はやはり石のような硬さであったという。この芋は今に至るも絶えることがないと『房総一覧志』に見える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 下総の巻(藤澤衛彦・日本伝説叢書・1919年(大正8年))
『日本伝説叢書 下総の巻』は、藤澤衛彦が編著し、大正七年の緒言と大正八年の序を添えた下総国の伝説集である。平将門・佐倉宗吾・真間の手児奈・累などを中心に、千葉県と茨城県西部にまたがる旧下総の城跡・寺社・墓・橋・井戸などにまつわる伝説を、地誌や古記録の引用を交えて収める。緒言で百七十九編を収めると述べ、国名の由来から始めて、話ごとに所在の町村名を付した見出しを立てて並べる。