十四日の夜に寄る桑の児の嫁
どんな伝承か
安房郡那古町の那古の浜には、桑の児の嫁と呼ばれる貝が寄ることがある。その貝は蛤に似て小さく、殻には桑の葉の紋があり、あるいは木賊に似た筋のあるものもあるという。普通の貝は決して寄らず、十四日の夜にだけ寄るといい、里の言い伝えでは、これを桑の児を婿とする嫁貝と呼んで、その夜、里人は貝の寄るのを待って探るのだという。「房総志料続篇」には、里人が提灯を点し、熊手で砂をかき探るとあり、貝は白く丸みを帯びて細長く、味は他の貝にまさると記されている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 安房の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1919年(大正8年))
『日本伝説叢書 安房の巻』は、藤沢衛彦が大正八年に編んだ安房国(千葉県)の伝説集である。天富命の渡来や源頼朝・里見氏・日蓮にまつわる英雄伝説を中心に、社寺の縁起、風俗・信仰、船幽霊や一本足の蛸などの特異な伝承を、『安房志』『房総志料』などの地誌や寺伝・口碑から引いて収める。緒言と「安房国と牛」と題する序を巻頭に置き、鋸山から小湊まで各話に所在の郡村大字を添えて土地ごとに並べ、緒言では百八十六種を蒐集したと記す。