松平信明が名付けた臥龍松
どんな伝承か
西岬村塩見の見崎に仏母堂、すなわち十輪寺と呼ばれる小さな堂がある。その庭に横に臥して枝を伸ばした一株の松があり、高さ五尺、幹回り一丈二尺、枝は二十八間に及んだと「房総志料」に記される。古くは這松と呼ばれていたが、寛政のころ当地の領主松平伊豆守信明がこの堂に詣でて珍しいと愛で、臥龍松の名を与えてからはその名で呼ばれるようになったという。ただしその臥龍松も、いまはすでに跡だけになっているとのことである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 安房の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1919年(大正8年))
『日本伝説叢書 安房の巻』は、藤沢衛彦が大正八年に編んだ安房国(千葉県)の伝説集である。天富命の渡来や源頼朝・里見氏・日蓮にまつわる英雄伝説を中心に、社寺の縁起、風俗・信仰、船幽霊や一本足の蛸などの特異な伝承を、『安房志』『房総志料』などの地誌や寺伝・口碑から引いて収める。緒言と「安房国と牛」と題する序を巻頭に置き、鋸山から小湊まで各話に所在の郡村大字を添えて土地ごとに並べ、緒言では百八十六種を蒐集したと記す。