空腹の樵夫を呑み込んだ山姥の谷
どんな伝承か
この谷より下流の村に住む樵夫は、一か月分の飯米を一度にまとめて食う習わしだった。あるとき大の月を小の月と勘違いし、二升九升しか食わずに山へ入ってしまう。三十日目には空腹に耐えかね、山を下る途中で、ヘンボを頭にかぶった山姥に出くわし、そのまま呑み込まれた。木の枝の下を通ったとき枝に飛びつき、斧で山姥に斬りつけると、山姥は叫びながら谷へ走り去った。山鳴りと震動がすさまじく、樵夫は村へ逃げ帰ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説名彙(柳田国男(指導)・日本放送協会(編)/関敬吾・石原美子(編纂)・1949年(昭和24年))
『日本伝説名彙』は、柳田國男の指導のもとに日本放送協会が昭和二十四年に編んだ伝説の名彙である。全国の伝説を、その拠り所となる木・石・岩・橋・清水・淵・塚・坂・屋敷・地蔵などの地物の名ごとに集め、伝わる県郡村名を付して、郡誌・市町村誌や伝説集、民間伝承誌などの出典を括弧で示す。冒頭に柳田の「傳説のこと」を置き、木・石岩・水・塚・坂峠・祠堂の部に分けて、巻末に資料の解説と種類別索引を付す。