猫とヤスデが止めたタールの川の夢
どんな伝承か
長野県埴科郡坂城町の多田ちとせさんは、昭和六十年、病気で三日間意識不明のあいだにこんな夢を見たという。すみれやたんぽぽの咲く春の野原を流れる、白いミルクの川をたらいの舟で流れていると、そこへ黒いタールの川が流れ寄ってきた。すると猫が百匹ほど現れてタールの流れを止めようとしたが、なかなか止まらない。猫たちはやすで(ムカデに似た、野辺山の列車を止めるという伝説の虫)を雲のように連れてきて、力を合わせてタールの川を堰き止めた。うららかなミルクの川を楽しく下っていったところで目が覚めたといい、家で飼っている猫が自分を助けにきてくれたのだと感じ、その頭をなでたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。