裾を踏んで転び病狼に食われた子
どんな伝承か
三峰川の谷の中尾で、明治の初めにあった出来事。ヤシキという家の子が、小黒川のほとりで仲間と遊んでいると、川上から、やめえ犬が出たから逃げろという叫び声が聞こえた。やめえ犬とは病にかかった犬で、よだれを垂らしてしきりに唸るので、見ればそれとわかる。子どもたちは一斉に逃げたが、ヤシキの子は着物の長い裾を踏んで転び、食い殺されてしまった。その子は前の日にも、裾を短くしてほしいと何度も母親にねだっていたが、忙しさにまぎれて聞いてやれなかった矢先のことで、村人の涙を誘ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。