棺の陰から飛び出した愛猫
どんな伝承か
昭和五〇年頃の話である。郡山市日和田町の語り手の友人に、癲癇を持ち身障の中学校を出て間もない男子がいた。猫が大好きで三匹を可愛がっていたが、ある夜、風呂の中で発作が起こり事故死してしまった。知らされて行ってみると、三匹のうち一匹が枕元にうずくまり、追い立てても離れようとしない。翌日の埋葬の当日には棺箱の陰にひそんでいて、突然飛び出して参列者を驚かせた。それ以来この家を訪ねても、この猫だけは姿を見ることができなくなったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。