出征の日に兄の厄を負った三毛猫
どんな伝承か
我が家のおとなしい雌の三毛猫が、兄が中国大陸へ出征する日にいなくなった。家の者が心配して探すと、出産前で腹が大きかったために納屋の垂木の間に挟まり、抜け出ることができないで死んでいた。父親は、兄が無事で帰るまで他言するなと言い、語り手はひとり近くの土手で三毛猫の死体を埋めて弔った。父は「飼猫は家人の不幸を自分で背負うものだ」と言っていた。兄は昭和二一年、中国大陸の戦争から無事に帰って来た。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。