太ったと言われて絶食した猫
どんな伝承か
多摩川で拾ったので多摩と名づけた猫は、もともとよく食べる質だった。近ごろ太ったのではないかと言われた翌日から、ぱたりと何も口にしなくなり、三日で腹がぺちゃんこになる。慌ててちゃんと食べなさいと声をかけると、今度は目の前のものを片端から平らげ、うどんまで食べ尽くしてしまった。この一件が民話の雑誌に載り、掲載誌が送られてきた。ほかの荷物と一緒に卓へ置いておくと、多摩は本の入った袋だけをがさがさやり、早く開けろと鳴き立てる。開いてみれば、自分の話が載っていたのだった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。