捨てた神社に先回りしていた親猫
どんな伝承か
昭和四六年頃のこと。練馬区旭町の話者の家に、戸締りの隙をついて放浪の猫が入り込み、戸棚(押入れ)の下で五匹の子を産んだ。帰ってみるとニャーンニャーンと鳴いているので驚き、困り果てた。飼うことはできないので、親猫のいない時に子猫五匹を取り出し、一キロほど離れた小高い丘の神社にそっと捨てた。深夜のことであった。可愛い子猫であったが、残念ながら育てられなかったのである。帰ってきた親猫は鳴いて鳴いて、家の周囲をぐるぐると歩き回っていた。ところが三日後、その神社に行ってみると、そこにはなんと親猫がいたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。