別荘ノ池の墓地へ向かう狸の葬列
どんな伝承か
久千田村の北の山すそに別荘ノ池という大きな溜池があり、その東北の小高い所が村の共同墓地で、庵寺もあった。辺りは昔から狸の多い所である。先年、森沢の素封家の主人が亡くなり、盛大な葬列が墓地へ向かった。翌晩、素封家近くの小さな森に無数の提灯が集まり、長い列となって墓地へ進み、庵寺の前で一団になったのち散り散りに消えた。前夜の葬式と寸分違わなかった。同じ晩、池の下手の道端の家の若い嫁が便所の窓から道を見ると、白無垢で提灯を持つ女たちの列が通り、その顔がみな狸だったので気を失った。翌朝、道には狸の足跡が無数に残っていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。