電話に手をついて詫びたおっかさん
どんな伝承か
村にもいよいよ電話が一台入ることになった。電話局から人が来て帰った後、ふとみるとかばんが置いてある。あわてて追いかけて「かばんを忘れたのではないか」と声をかけると、その人は首をかしげながら戻って来て「かばんじゃねえ、それが電話つうもんだ」と言った。そのころの電話は、かばんによく似ていたのだという。さて電話は入ったものの、かかってくることもなく日が過ぎたが、ある日おっかさん一人の時にヂリヂリと鳴った。どう出たらよいか分からず、うろうろした末、電話の前に坐って手をつき、「申し訳ねえども今とうちゃんが畑だで、またにしてくろ」とおじぎをした。すると電話はチリンといって鳴りやんだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 12 写真の怪・文明開化(松谷みよ子・現代民話考・1990年代初期(平成初期))
松谷みよ子『現代民話考 12 写真の怪・文明開化』を小話単位で全550話収録。心霊写真など写真の怪と、文明開化期の怪異にまつわる現代の民話を全国から採集し収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明496話・市区町村判明377話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。