時計の十時が分からぬ男の呟き
どんな伝承か
外神田仲町の村上辨蔵が、一昨日は東京裁判所へ呼び出されながら遅刻したため、今日は下がるようにと申し渡された。ところが不承知の様子なので、それなら時計を見よと示されたが、時計を見ても五ツがどれで四ツがどれやら少しも分からないと呟いている。そこへ折よく十時の鐘がチンチンと鳴った。今の数はちょうど十だ、昔は十という時刻はなかったがなあ、と言ったという。当時の新聞が短く伝えている。
原典より
回答者・中村博(東京都在住)。—— 現代民話考 12 写真の怪・文明開化(松谷みよ子・現代民話考(立風書房)第十二巻・1996年(平成8年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 12 写真の怪・文明開化(松谷みよ子・現代民話考(立風書房)第十二巻・1996年(平成8年))
『現代民話考 12 写真の怪・文明開化』は、松谷みよ子が一九九六年にまとめた現代民話の資料集で、同シリーズの第十二巻にあたる。雑誌での呼びかけやアンケート、聞き書きで寄せられた話と新聞・雑誌の記事を、心霊写真をめぐる怪異と、明治以降の電信・汽車・電気燈などの新しい文物や流行病に戸惑う人々の話に分けて収める。話例ごとに本文を掲げて各地の類話を分布として並べ、話者や回答者の名と出典を添える。