息を吸って吹き消す村の電灯
どんな伝承か
大正の頃のこと。初めて村に電灯がついたのは大正九年、話者が七歳の年であった。電柱を立て電線を張り、今夜こそ電灯という文明の自動ランプがつくぞと、村中の子供も大人も浮き浮きしていた。物知りが「あの針金の中を石油が流れてきて、明りがひとりでにつくんだ」と言うと「ランプはどうする」と聞く。「それは電気の休みの晩に必要だ」というので、ランプを捨てたり拾ったりした者もいた。夕方、村中が一斉に青光りしたときは万歳と喜び、餅をついて祝った村もあった。消すには息を吸ってから強く吹かねば消えない、と言った人もいた。明るすぎて昼間もつけっぱなし、猫は明かりを怖れて居間に寄りつかなかった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 12 写真の怪・文明開化(松谷みよ子・現代民話考(立風書房)第十二巻・1996年(平成8年))
『現代民話考 12 写真の怪・文明開化』は、松谷みよ子が一九九六年にまとめた現代民話の資料集で、同シリーズの第十二巻にあたる。雑誌での呼びかけやアンケート、聞き書きで寄せられた話と新聞・雑誌の記事を、心霊写真をめぐる怪異と、明治以降の電信・汽車・電気燈などの新しい文物や流行病に戸惑う人々の話に分けて収める。話例ごとに本文を掲げて各地の類話を分布として並べ、話者や回答者の名と出典を添える。