夢枕で握り飯を乞うた戦死の弟
どんな伝承か
湖南町の館に住むおふみ婆さんは、支那事変で長男を亡くし、次男も応召で戦地へ送っていた。筆者が用事でその家を訪ねると、婆さんは次男も戦死したと言う。わけを尋ねると、前の晩、夢枕に次男が真っ青な顔で立ち、腹が減ったから早く握り飯を頼む、大勢だからたくさん握ってくれと言った。いつ内地へ帰ったのかと思いながら急いで握って出したところ、兵隊の姿は消えて夢から覚めたのだという。次男の戦死公報はその直後に届き、戦死の日付は夢に現れた日と同じだった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』は、松谷みよ子が編んだ「現代民話考」の一冊である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』のアンケートへの回答や聞き書き、新聞・雑誌の記事から集めた、予知夢や死の知らせの夢、死者や神仏の夢告げ、死の前後に出る火の玉、生きている人から抜け出す魂の話を各地から収める。三章それぞれの冒頭に編者の論考「考」を置き、項目ごとに代表的な語りと、県別に並べた短い報告を話者・回答者・出典を添えて載せる。