夢枕で握り飯を乞うた戦死の弟
どんな伝承か
館のおふみ婆さんは、支那事変で長男が戦死し、次男が応召になった。筆者がその家へ用達しに行ったとき、婆さんが「舎弟野郎も戦死した」という。驚いてわけを聞くと、ゆうべ夢枕に舎弟が真青な顔をして立ち、「腹がへったから早く握り飯をたのむ。大勢だからたくさん握ってな」と言った。はて、いつ内地に帰ったのかと思いながら大急ぎで握って出したが、兵隊の影も形も失せ、そこで夢からさめたのだという。舎弟の戦死公報はその直後に届いた。戦死の月日もその夢に現れた日であり、おそらく刻限もその時であったと思われる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考・昭和50年代~60年代(推定))
松谷みよ子『現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』を小話単位で全513話収録。夢のお告げ・予知夢、火の玉、ぬけ出した魂(離魂)など、心と生死の境にまつわる現代の民話を全国から採集し収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明482話・市区町村判明386話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。