迎えに来た亡き夫を追い返した夢
どんな伝承か
丁度三年前の四月頃、夜も明けきらぬうちに、死んだはずの夫が中門から入って来て高い声で「ばあさんや」と呼んだ。驚いて目を覚まし、雨戸を一枚開けると外に夫が立っている。何しに来たのかと聞くと、迎えに来たと言う。夫が亡くなった翌年に恐山へ行き、いたこを頼んで話したとき、自分の分も長生きして孫の生い立ちを見てくれと頼んだではないかと言うと、夫は哀れな顔でじっと見つめ、黙って音もなく帰っていった。墓の方へは向かわず女川の方へ行ったように思えた。三日ほどして、夫のいとこの老女が死んだと知らせが来たという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』は、松谷みよ子が編んだ「現代民話考」の一冊である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』のアンケートへの回答や聞き書き、新聞・雑誌の記事から集めた、予知夢や死の知らせの夢、死者や神仏の夢告げ、死の前後に出る火の玉、生きている人から抜け出す魂の話を各地から収める。三章それぞれの冒頭に編者の論考「考」を置き、項目ごとに代表的な語りと、県別に並べた短い報告を話者・回答者・出典を添えて載せる。