夢で背広を求めた大工の棟梁
どんな伝承か
昭和五十八年三月八日、青森市小橋で、大工の棟梁であった徳雄(六十五歳)が、自分で建てた住宅の屋根から落ちた雪塊を頭に受けて即死した。小さい時に父を亡くし函館で住み込み修業をした甲斐あって腕が立ち、地区の大工組合長も務めた信望の厚い人であった。百ヶ日の法要が終って間もないある晩、家業を継いだ二男が父の夢を見て全身金縛りになりひどくうなされた。夢に出たのは新築前の古い自宅で、父は浴衣姿、生前禿げていた頭に毛髪がふさふさとあり、会合に出かけるので服を出してくれと頼んで消えた。母と相談し、形見の背広を木造町の弘法寺へ納めて供養したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』は、松谷みよ子が編んだ「現代民話考」の一冊である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』のアンケートへの回答や聞き書き、新聞・雑誌の記事から集めた、予知夢や死の知らせの夢、死者や神仏の夢告げ、死の前後に出る火の玉、生きている人から抜け出す魂の話を各地から収める。三章それぞれの冒頭に編者の論考「考」を置き、項目ごとに代表的な語りと、県別に並べた短い報告を話者・回答者・出典を添えて載せる。