ひもじいと訴えた母の夢枕
どんな伝承か
昭和五十八年四月のこと。亡くなった母を荼毘に付し、遺骨を寺の本堂の仏前に据えて、家族は別室でおときの膳についた。その後、骨は妹夫婦の家へ引き取った。翌朝早く、妹の夫で母が最も頼りにしていた医者のKさんの夢に母が現れ、腹がすいてひもじいと訴えた。Kさんは驚いて涙声で電話をよこし、語り手ともう一人の妹も青くなって駆けつけた。急いで御馳走をこしらえて骨の前に供え、明日からは出ないでほしいと皆で拝んだ。そのとき、寺でおときを食べた際、母に何も供えていなかったことに思い当たった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』は、松谷みよ子が編んだ「現代民話考」の一冊である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』のアンケートへの回答や聞き書き、新聞・雑誌の記事から集めた、予知夢や死の知らせの夢、死者や神仏の夢告げ、死の前後に出る火の玉、生きている人から抜け出す魂の話を各地から収める。三章それぞれの冒頭に編者の論考「考」を置き、項目ごとに代表的な語りと、県別に並べた短い報告を話者・回答者・出典を添えて載せる。