炉端をころがる卵ほどの光
どんな伝承か
七十五年ほど前の話である。下藤の故オスミ婆さんが十二、三歳の頃、生家の門崎家では祖父が重病であった。夜、祖母が小便に立った起き際に目を覚ますと、ニヤと呼ぶ家の中の農作業場の炉の近くを、卵ほどの大きさの光る物がころがり回っていた。オスミ婆さんが「アッパー、そこに光る物がいる」と言い、母が「何処に」と聞いて見ると、光り物はさっと別の方へ消えて見えなくなった。母親にはまったく見えなかったという。二、三度繰り返してやがて見えなくなり、次の朝、祖父は死んだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』は、松谷みよ子が編んだ「現代民話考」の一冊である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』のアンケートへの回答や聞き書き、新聞・雑誌の記事から集めた、予知夢や死の知らせの夢、死者や神仏の夢告げ、死の前後に出る火の玉、生きている人から抜け出す魂の話を各地から収める。三章それぞれの冒頭に編者の論考「考」を置き、項目ごとに代表的な語りと、県別に並べた短い報告を話者・回答者・出典を添えて載せる。