山腹を登る狐の嫁入りの火
どんな伝承か
阿南市長生町三倉での昭和十八年頃の話。阿南市地方では、狐の嫁入りという火が時々見られた。夜、まったく人家もない真っ暗な山の中腹に、点々と十個ほどの火が点滅し、それが道を登るように次第に上っていって、三十分ほどですうっと消えてしまう。近くの山ではなく、一キロほど離れた山に見られた。この火を狐火とか狐の嫁入りと呼ぶとともに、死人の出る前兆で、狐が葬式をしているのだともいわれた。昭和十八年頃から二十年頃にかけ、長生の街から三倉へ帰る途中でよく見かけ、そのたびに火の出た山の下の集落で死者があり、戦死者の噂が伝わってきた。この火は見ても不幸を呼ぶためか、他人にしゃべってはいけないともいわれていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』は、松谷みよ子が編んだ「現代民話考」の一冊である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』のアンケートへの回答や聞き書き、新聞・雑誌の記事から集めた、予知夢や死の知らせの夢、死者や神仏の夢告げ、死の前後に出る火の玉、生きている人から抜け出す魂の話を各地から収める。三章それぞれの冒頭に編者の論考「考」を置き、項目ごとに代表的な語りと、県別に並べた短い報告を話者・回答者・出典を添えて載せる。