仏間の障子にともった死の前の火
どんな伝承か
田辺市今津町での昭和四十二年七月の話。語り手の父は二年余り病床にあり、血圧が高く左半身と言語に障害が出て、起き上がることすらできなかった。時々発作が出るので、自分の前歯が折れるほどの痙攣を起こした。父が死ぬ一か月前の夕暮れ時、父の里の仏間を、父の実弟が何気なく外から家の中を見たところ、人もいないのに、まるでランプの火がともるような火が障子に映るのを見たという。火はすぐに元に戻った。父は八月十二日に亡くなった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』は、松谷みよ子が編んだ「現代民話考」の一冊である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』のアンケートへの回答や聞き書き、新聞・雑誌の記事から集めた、予知夢や死の知らせの夢、死者や神仏の夢告げ、死の前後に出る火の玉、生きている人から抜け出す魂の話を各地から収める。三章それぞれの冒頭に編者の論考「考」を置き、項目ごとに代表的な語りと、県別に並べた短い報告を話者・回答者・出典を添えて載せる。