善光寺で出会った千年の尼
どんな伝承か
備中浅口郡金光町の津熊に伝わる昔話は、千年も生き続けた尼の話である(『昔話研究』一ノ八)。娘のころに人魚を食べてから長生きをし、尼となって諸国を巡り、善光寺にいたとき、備中から善光寺参りに来た者と出会う、という筋立てになっている。著者は、ここには善光寺の配下で布教にあたった唱門師、とりわけ女性の布教者の姿がうかがえるとし、『会呂利物語』に見える善光寺内の比丘尼寺などが、その本拠ではなかったかと想像している。
原典より
この尼が、娘のとき人魚を食してから長生し、尼になつてのち諸々廻國して善光寺にゐたとき、備中の者が善光寺參詣に来て會ふ構圖になつてゐる。—— 福井縣鄕土誌 民間傳承篇(中塩清之助(編)・福井縣鄕土誌・1939年(昭和14年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
福井縣鄕土誌 民間傳承篇(中塩清之助(編)・福井縣鄕土誌・1939年(昭和14年))
『福井縣鄕土誌 民間傳承篇』は、福井市立実科高等女学校の郷土誌第二輯として教諭中塩清之助が編み、昭和十四年二月付の学校長金岡正孝の序を巻頭に置く。丹生郡の名、哭女、越前萬歳、仏の舞、幸若舞、猫塚、隠れ里、子育て幽霊、愛発の関、弁慶譚、八百比丘尼、水の神女譚を、古文献や他地方の類例と照らして論じる。生徒が集めた県下の昔話は類話をA・Bなどに分けて並べて解説を付し、校正者大村四朗の跋を添える。