狐火に照らされた島津忠久の誕生
どんな伝承か
薩摩の島津家の祖、島津忠久の生まれについての言い伝え。比企判官能員の妹で丹後局と呼ばれた女性は、頼朝の寵愛を受けて身ごもったが、妻の政子に激しく妬まれて命を狙われ、ひそかに館を抜け出して上方へ向かった。住吉まで来たところで日が暮れ、宿を頼んでも里の人は泊めてくれず、雨まで降り出した。そのうち産気づいたため、やむなく垣根のそばでお産をすると、どこからともなく狐が一匹現れて狐火で暗がりを照らし、無事に子が生まれた。それが忠久で、狐は住吉神社の末社の稲荷社のものだったという。ただし別の系図では、忠久は丹後内侍と惟宗広言のあいだの子とされている。
原典より
これが島津忠久公であり、その狐は住吉神社の末社稲荷社のものだったというのが、今までの言い伝えである。—— 江戸動物民話物語(窪田明治) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
江戸動物民話物語(窪田明治)
『江戸動物民話物語』は、「郷土史・東京」の刊行会を主宰した窪田明治が、東京の郷土史を調べた材料から江戸の民話を選んでまとめた本である。狐や狸、猫、蛇が人を化かし、恩を返し、祟る話を中心に、本郷・王子・向島・麻布・三田など東京各地に伝わる話を収める。狐・狸・猫・蛇・不思議な生き物の五部に分け、一話ごとに舞台となった土地の史跡や寺社の由来、沿革の解説を添え、まえがきとあとがきを付す。