伐り倒された袖かけの松と女の子
どんな伝承か
宮久保の白幡神社の近くの坂道は、両側に松の大木がそびえ、昼間でも薄暗く、雨が降れば田んぼのようにぬかるんだ。この坂道で転んだ人は必ず近いうちに災難にあうという言い伝えがあり、転んだときは自分の着物の片袖をもぎとって松の枝にかけ、災難除けとした。枝には多くの片袖がかかり、いつしか袖かけの松と呼ばれた。一九五〇年三月、道路拡張のため伐採されることになったが、誰も手をつけず、腕のいい木びきが頼まれた。枝を伐る若者は体が動かなくなったり耳鳴りに泣き声をあげたりし、まさかりを打ちこむと松は反対側に裂けて折れ、近くで遊んでいた女の子が下敷きになって命を落とした。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。