血を流した由良成山のバベの木
どんな伝承か
由良成山は、由良の町並から船で数分渡らねばならない島である。由良は紀淡海峡に面し、明治二九年に要塞が完成して大砲がいくつも据えられていた。成山にはバベ(ウバメガシ)の木があり、要塞を築くにあたって軍から伐るよう命令が下った。木挽が伐りかけると木から血が流れてきたので、驚いて伐るのをやめ、司令官はしめ縄を張って神木として祀った。あるとき兵隊がその木の側の丸太に腰を下ろして一服していると、尻の下がごそごそする。立ち上がって見ると丸太ではなく大きな蛇だった。その兵隊は間もなく亡くなった。以後、由良の人はこの木を「長い人」と呼び、小枝も伐らないという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。