貧しい大名が植えた東照宮参道の杉
どんな伝承か
日光の東照宮へ行けば、参道の両側に杉の大木が何百本と並んでいる。陽明門をはじめ金をかけた建物も多いが、語り手はあの杉のほうがよほど金目の財産だと感じたという。むかし東照宮を造るとき、日本中の大名から寄付を出させた。大名たちは将軍によく思われようと、無理をしてでも金や人夫を出し、社殿は立派に仕上がった。その中でいちばん小さく貧しい大名は金が出せず、代わりに参道の周りへ杉を植えた。それがその大名にできる精一杯の仕事だったという。杉は少しずつ太り、何百年も経った今では、どの大名の寄進もかなわぬほどの財産になっている。山の木は知らぬ間に見事な財産になるものだと思い知らされた、と語られた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。