コブシとブナを先生と呼ぶ山の学校
どんな伝承か
昭和一〇年三月、金子さく子さんは小学校の尋常科を出ると、炭を焼く父を助けて山の仕事に精を出した。高等科へだけは行きたかったのに、と卒業式の日に泣いた顔が語り手の心に残っている。それから何年も経って再会したとき、さく子さんの顔は輝いていた。いまは山の学校へ通い続けているのだ、受け持ちの先生は自分で選んでよく、春いちばんに咲くコブシの木だったり、年を経たブナの大木だったりする——そう語る姿は、本当の学校へ通っている人の輝きだったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。